ネット広告に支配されていく広告業界

仏Zenith社によると、2017年の広告費の見積もりは、ネット広告費が2,050億$で対前年+13%、テレビが1,920億$という事で、なんとネット広告費がテレビ広告費を上回るというリリースがあった。

その見積もりによれば、ネット広告は広告費全体の36.9%を占めるに至り、これがなんと、2019年には41.7%にまで増えるのだそう。

一方英CARATが2016.9月に公表した見積もりによれば、広告費に占めるデジタル広告のシェアは30.2%、テレビ広告は40.3%だと言う。

Zenithよりは保守的な見積もり。発表当時のネット広告の伸長具合にも左右されているのかもしれない。

ちなみにネットの伸び率は13.6%、テレビの伸び率は2.3%で算出している。

仮にこの成長率の精度が高いと仮定して、これがあと数年も続けば、いずれにせよ、ネット広告がテレビ広告を上回る日はそう遠くない将来の事のように思える。

一方、日本の電通によると、日本の広告費は2016年において6兆2,880億円。

テレビの構成比は31.3%、金額は1兆9,657億円で成長率は+1.7%

ネットの構成比は20.0%、金額は1兆3,100億円で成長率は+11.3%

テレビ広告は既に成熟しており、ネット広告が大きく伸ばしているという点では世界の潮流と一致している。

特に世界的に近年は「運用型広告」が主流になりつつある。

成長率は直近3か年において、

・2014年 +23.9%

・2015年 +21.9%

・2016年 +18.6%

運用型というのは、アドネットワークという広告のネットワーク内において、例えばDSP(Demand side Platform)とSSP(Supply side Platform)の運用などがある。

DSPとは広告を出したい側。SSPとは広告を出してもらいたいメディアなどが導入しているシステム。

SSP側がPVが生まれる度に、広告枠に表示する広告をDSP側に要求します。

それに呼応して、複数のDSPがそれぞれオークションを行い、それにより選別されたDSPの広告が従前のSSPに渡され、SSPはそれをメディアに戻してやり、広告が出力されるという算段。

広告主側としては、広告クリエイティヴを作り、そしてそれを出力する回数やクリック回数、コンヴァージョン率などの予算を決め、あとはDSPにお任せ。

DSPやSSPは既存の広告代理店が人力でやっていた事をシステムで省力化して肩代わりしているようなものです。

現在では、このシステムの管理や運用は広告代理店の仕事になっているようですが、ゆくゆくは広告主がマーケティング予算を使い、オリジナルのDSPを構築し、広告代理店の仕事はなくなっていくのではないかと思っています。

広告代理店に丸投げすれば、企業はそりゃ楽でしょうが、電通の不正請求問題などありましたから、自社のマーケティングで運用するように広告出力を改めれば、自社内にマーケティング意識が根付きますしマーケティングリソースも構築できる。長い目で見ればパフォーマンスがいいと思うからです。

 

PMP(Private Market Place)

そこで最近脚光を浴びてきたのが、PMP。

Privateというだけあって、今までのように開かれたアドネットワーク上にあるメディアに無差別に広告を出力する方式とは違って、閉じられた広告マーケットネットワークの事です。

インターネット上には星の数ほどのメディアがありますから、玉石混交。

上品な政治経済系の情報サイトもあれば、どぎついエロサイトもあるわけですが、既存の運用では、企業広告がどこに出力されるかわからなかったわけです。

極端な例を挙げれば、青少年保護育成系の公共広告みたいなお堅い広告が、ロリコンのエロサイトなんかに出力された日には、とんだブラックジョークになってしまいます。

なので、良質な広告枠を提供できるメディアだけを集めたネットワークを構築したネットワークで、広告主は低品質なメディアのコンテンツ内に広告を出力する危険性がぐっと減るわけです。

これはメディア側にとってもいい話。

ネットメディアというのは現在PV至上主義なっています。PVというのはそのサイトのコンテンツの表示回数の事ですが、ただ無暗にPVが多ければいいサイトであるという価値観が蔓延している。

ところが地味でも、いいコンテンツを発信しているサイトもありますが、コンテンツがマニアックだったり、いい内容なんだけど地味でマーケティングが上手く行ってなかったりで、PVは思うように稼げないサイトはあります。

ところが内容自体は良いモノを作っているので、そこを訪れる人は少ないけれど、ただ訪れる人は大変にお金持ちだったり、社会的地位が高かったりと、訪問客の質が高い事もある。

そんなPVは足りないけれど、質が高いサイトにとっては、いいコンテンツの広告表示枠を高く買ってもらえるというクオリティを重視して作り込んだことが報われる時代が来つつあるという話なわけですね。

悪貨が良貨を駆逐している現状を変える福音と言えるのかもしれません。

広告主とメディアのWin-Winを実現させうるわけです。

 

ネイティヴアド

上記の点などを勘案すると、今後はネット広告はまだまだのびしろはあると考えてよいと思います。

ネット上のアドテクが発達するにしたがって、広告代理店の必要性もより問われてくるように思われます。

メディアはとにかくいいモノを作るという事に専念すればいい、いい時代なのかもしれません。

最近のネットメディアに関してはエンドユーザーはみな、嫌になっているところはあるでしょう。

サイトのページを開いたら、突然画面いっぱいを広告が占拠したり、突然動画広告やgif広告が動き出したり(これでパケットを消費させられています)、変な場所にオーヴァーレイ広告やレクタングルがあって、画面が狭く感じたり。

こういうユーザヴィリティを毀損する広告出力の方法は今後淘汰されていくのではないかと密かに期待しています。

逆にユーザーフレンドリーな読んで為になったり、読んで面白い記事体広告などがネット広告の主流になってくるのではないかと思っています。

例えば、経済系のメディアで、経済ネタの横に、企業のブランディング記事体広告などがあると、経済に興味のある読者なら、どんな広告なのか気になって、クリックして読んでみたくなるものなのです。

ユーザーの手元操作のミスで、レクタングルや動画広告を間違って押させようなどという姑息で卑怯な広告なんて、そういう「読んでみたい」と思わせる広告に勝てるわけがありません。

広告という単なる逆効果になっています。そこに広告主もメディアも早く気付くべきなのです。

こういった、そのサイトのコンテンツとマッチした広告の事をネイティヴアドと言います。

経済系のメディアの編集部が実際、他のコンテンツを作るのと同じように、企業に取材して、現場の人間や経営者にインタヴューをして取材した内容を元に、硬派な記事体広告を作り、読者が読ませたいように出力する。

最近ではこれをオシャレな呼び方で、「Sponsered Contents」などと呼称したりしているようです。

要はカネを貰って作っているコンテンツなので、広告なのですが、広告、というとユーザーに敬遠されてしまうので、そんな呼称を開発したのでしょう。

読者が「読みたい」とか「面白そう」とか「気になる」と思ってクリックした記事体広告ですから、表示回数やクリック率やそういった数的指標では計り知れないほど、広告効果は高いと思います。

広告主は高い広告効果を得られ、メディア側には、広告枠を売ったカネと制作費まで入ってくるいいマネタイズになる。

今後、メディアはネイティヴアドとPMPに軸足を移し、広告単価を上げていけばいいのです。

そして、そのために、よりいいコンテンツを作る、という本来のメディアの役割をどんどん追求していくべきなのです。

邪魔なネイティヴアドではない広告を排除していって、コンテンツの質を底上げして、ユーザビリティを上げていけば、自ずとPVも上がってくるはずなのです。

動作を重くしたり、ユーザビリティを毀損する広告をメディアは今すぐ取っ払うべきでしょう。

そして、メディアの命であるコンテンツの質を底上げし、安易なPV獲得には走らず、ユーザーの質も底上げしていきましょう。

実はそれがマネタイズの一番の近道なのです。(ネット広告費のマクロ的な話から、ネットメディアのマネタイズというミクロな話にいつの間にかなってしまいました。。。)

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