日本の経済界は金銭解雇を早く導入しなければいけない

5月22日に、厚生労働省が、「解雇の金銭解決制度」を有識者検討会に報告書として提言したという報道がありました。

この「解雇の金銭解決制度」には大賛成の立場。

なぜなら、現状の日本の労働市場の整理解雇の4要件が厳しすぎて、企業も正社員も非正規社員もみんな不幸になっているからです。

どう不幸になっているかと言うと、企業はいったん正社員を雇用してしまうと、よほどの背任行為でもない限り、厳しい規制を乗り越えないと正社員を解雇できないため、正社員を雇用する事を躊躇する。

よって非正規社員が増えて、雇用の不安定が経済界に半ば容認されてきたわけです。

企業が正社員の雇用を躊躇するという事はつまり、正社員採用のハードルが上がる事を意味します。

一旦正社員採用されても、その既得権益を手放してしまえば、今度また、正社員に復帰するのは至難。

よって、どんなに劣悪な労働環境でも、鬱病になる寸前まで、我慢して働きつづけなければいけない。

また、社会や経済のマクロ環境というのは刻一刻と変化するわけですが、どんなに社内外の事情が変わったとしても、正社員を解雇できないと、企業は固定費を抱え込まざるを得ず、経営が不安定になる。

企業を潰しても労働者側にいいことはなにもない。つまり今の解雇規制の厳しさはすべからく企業や労働者をみな不幸にしている規制と言えるのです。

だから金銭解雇導入や、解雇規制緩和を早く施行していかなくてはならない。

整理解雇の4要件とは、労働裁判などで組成されてきた判例に基づく、企業が正社員を解雇する際に求められる要件。4要件自体は以下の通り。

 

1.経営上の必要性がある。

4要件の内、一番ハードなハードルがこれです。

経営上の必要があるというのは、つまり、企業の経営環境がとてつもなく悪化して、資金が回らなくなり、社員に賃金を払えなくなる程経営がひっ迫していないと解雇できないという規制。

つまり少しでも余裕がある企業は正社員を雇用し続けなければならない。

日本企業が欧米の企業などと比べて、大胆な投資やダイナミズムな経営戦略を実行できないとしたらその弊害はここに根があると言っても過言ではないでしょう。

欧米ではジョブ型の雇用がポピュラーですから、自分のアサインされたジョブが完了すれば、その企業から解雇される事が自然なのです。

自分の仕事がコンプリートしたから当然というわけです。

これこそがまあ普通の「就職」でしょう。日本人の就職が「就社」と揶揄されるゆえんはここにあります。

失業というとその響きに物凄いネガティヴなモノを感じてしまいますが、失業とは経済にとっては必要な状態なのです。

失業とはいいことでも悪い事でもない。ただ経済活動をしていたら厳然とそこにあるものなのだと言う認識を労働者ひとりひとりが持たなくてはなりません。

 

2.解雇を避けるために努力した

2番目の要件が解雇を避けるために努力したか否か。

これは、正社員を解雇する前に、例えば事業用資産を売って資金を作ったとか、カネを借りたとか、非正規社員を解雇したかとかそういう要件です。

企業というのは継続する事を前提としています。それで株主や債権者、労働者などのステイクホルダーをはじめとしたいわゆる社会に還元活動をしているわけですが。

今の解雇規制では、正社員を守ると言う意識が肥大しすぎて、会社の財務状況を悪化させてでも、あるいは、非正規社員を切ってでも、正社員の雇用を守れ、と非人道的な事を慫慂しているわけです。

これは何とも変な話です。

あらゆる企業の経済活動や社会活動よりも、正社員の雇用維持が第一義となっている。

正社員を守るためなら、非正規社員を犠牲にしてもいい。

そんな、右とか左とかを超越して、ただ単に、正社員を守ると言う事だけが目的化している歪な規制としか見えません。

 

3.人選が妥当

解雇する人選が妥当かどうか。この要件は確かに大事かもしれないと思います。

管理職の恣意性やその政治力という定性的・感情的・懲罰的な措置により、正社員が不当に辞めさせられるという状況は絶対に看過する事はできないでしょう。

なので、この人選が妥当かどうかというのは、飽くまで、客観的、定量的指標に基づいて行うしかないでしょう。

営業社員ならば、その社員が生み出す収益から原価を差し引いた残りからその社員の人件費を差し引いて、それが赤字になってしまう状態が5年以上続くとか。

そこまで成績不良な社員を抱えていては他の成績の良好な社員のモチヴェイションは上がりませんし、まず肝心要の企業の屋台骨が揺らぎます。

だから明確な数値基準を法的に整理することは必要と思います。

会社は公的機関でも、慈善団体でもなく、営利団体なのだから、これは当然です。非情でも何でもありません。

 

4.従業員に十分説明している

この要件については、まあ当然だろ、という感じなのですが、きっと、説明不十分なまま不当解雇が横行した歴史があるのではないでしょうか。

往々にして、空気の悪い職場というのは、管理職と部下の社員の間にコミュニケーション不全があるものです。

なんとなく気に入らないとか、口答えするとか、そんな管理職の感情的・懲罰的な行為の延長として、会社とコミュニケーションのないままに不当に解雇されたと正社員が思いこまされたとしたら、それは泥沼の労働裁判になってもおかしくないという事です。

逆にコミュニケーションが回復しさえすれば、解雇しなくても済んだ事例があるとするならば、まずそれで解雇しなくても済むようになるなら、企業と労働者の間で解決してくれよ、というのがこの要件の趣旨なのではないでしょうか。

 

日本の企業に勤められるホワイトカラーを中心とした働き手は基本的には優秀な人が多いです。

そんな優秀な人たちが1社にその人生を捧げるというのは、結構な機会損失になっていると私は思います。

日本に根強く残る将来不安から派生するデフレや、低成長も、私はこの機会損失に由来する部分が大きいと思わざるを得ません。

一刻も早く、金銭解雇、解雇規制緩和を行い、日本の労働市場の人材の流動性を高める事が働き方改革の一里塚になるのだと思います。

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