企業の予算の策定について

私は昔サラリーマンをしていた時に、企業の経営管理のような仕事をしていたことがあります。

経営管理というと漠としているのですが、要は予実管理の事です。

3月決算の会社なので、毎年だいたい年初にその年度の計画数値を作り、その計画数値を月ごとのそれにブレイクダウンして、4月が終わったら4月の実績値と、5月が終わったら5月の実績値と比較して、売上が下振れたならその原因を、上振れたならその原因を解明し、予算達成に向け、定量的な分析を行い、予算達成の可否を「予測」する。

予算の達成が危ぶまれるならばそれを喫緊の経営課題として上申しますし、予算達成が順調ならば、まあ楽な仕事でしょう。

順調な事と言うのはまずないのですが。

そんな予実管理をしていた時に考えていたことです。

 

年間の売上計画・利益計画・資金計画は社長が作らなければならない。

私が経営管理をしていたその会社は時代遅れな会社で、この「社長がトップダウンで数値目標を下知する」という発想が全くありませんでした。

まず会社のビジョンを決めるのは経営者であり、社長であるというのは異論はないかと思います。

製品にかける想いや、市場の動向、中長期的に会社をどうしたいのか、経営者は青写真を描かなければなりません。

しかし私のいた会社は社長や経営者にそこまでの能力がなく、未来を描く事ができないでいました。

年間の売上・利益、営業CF、投資CF、財務CF、くらいの大きな数字は社長がどうしたいかと夢を描き、それを社員に共有できなくてはならないと思います。

しかし、その会社の社長は、まず、各事業部に予算の提出を求めるわけです。

営業部が年間にどれだけ稼げるかとか、広告部がどれだけ稼げるか提出せよと迫るわけです。

そんな風に、ボトムアップで下から上がってきた数字を足し合わせて、それを予算とする策定方法が常態化しているのです。

そんなナンセンスな予算の立て方はありません。

なぜなら、各事業部としては、予算は低ければ低い程いいのですから。

ハードルが低ければ、それを達成するのは楽なのだから、絶対低い目標を策定しようというバイアスがかかるに決まっています。

そんなボトムアップの弊害に気付かないというのも愚かなのですが、そんな感じで予算が策定されていく事に誰も疑問を感じないような、そんなレヴェルの低いガヴァナンスの会社でした。

 

順番が違う

予算策定の順番が違うわけです。

上記したようにまずは大きな数値は社長ほか経営者が苦心惨憺して作らなければなりません。

もちろん実現可能なもので、しかし会社を成長させられるような数値をです。そんな会社のビジョンを描くのが経営者の仕事なのですから当然です。

言ってみれば、会社経営の醍醐味とでも言えるのが予算の策定なのです。

なのに、それをボトムアップで下に任せている企業に、そんな経営者など必要でしょうか?

年間で1兆円の売上を目指すならば、

A事業部には5,000億円、B事業部に3,000億円、C事業部に2,000億円と、それぞれ大きな数字をアサインする。

各事業部はそれを受けて、では自分たちの事業部のどのリソースをどう使えば、与えられた予算を達成できるか知恵を絞るわけです。本来なら。

そうしたら自分たちの事業部の性格などを勘案して、それを月ごとの目標にブレイクダウンしていきます。

その際に、原価や経費がどれくらいかかるのか、どれくらいの利益を出せばいいのかという議論が各事業部で出来するでしょう。

各事業部が議論するのは実にそこのところなわけです。

だから本来的な予算策定とは、下記の順序になります。

【経営者側】

・大きな売上・利益の数値を創る。

・その売上数値と利益数値を自社の各事業部にそれぞれアサインする。

・人件費や減価償却費など、中枢で管理している原価や販管費を事業部に周知する。

【各事業部】

・経営側からアサインされた数値を元に季節変動性など考慮し、月次の予算に落とし込む。

・その際にかかる月次の原価や販管費の数字なども詳細に作り込んでいく。

・その売上・利益の数値を更にブレイクダウンして、今度はこれを各従業員ごとの個人目標に落とし込んでいく。そしてその数値目標を元に従業員を評価する。

【経営者側】

・上記の手順で下から上がってきた詳細な予算を精査する。数値や整合性のチェックをする。

・問題点があれば、抽出し、それを各事業部に修正などさせる。

・問題がないと判断できれば、予算として承認。全社員に周知する。

私が考えうるに、予算を策定する合理的なプロセスというはおよそ上のような順番になるかと思います。

原始的で経営者にマネジメント力がない会社では、これを全部ボトムアップで下に押し付けてしまいます。

そして上がってきた予算を見て、あれがダメ、これがダメ、と定性的で非論理的で非合理的な批判をし、より高い目標に作り直させるという、めちゃくちゃなプロセスが実質的に是認されているわけです。

さすがに上場企業ではこんなガヴァナンスはないでしょうが、少し大きなオーナー企業とか、サラリーマン社長が上部組織から出向している場合などは、むしろボトムアップ型予算策定が一般的なのではないでしょうか。

 

経営者の一番大事な仕事は予算策定と言っても過言ではありません。むしろ経営者ならば、前のめりでそれをやりたがるようでなければいけないとすら私は考えています。

これを下に押し付ける会社などはビジョンがないのですから、早晩市場から退出させられると思います。

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