後継者難による黒字休廃業の悲劇的な現状

経済産業省・中小企業庁の「2017年版 中小企業白書および小規模企業白書」によると、事業譲渡や売却、統合、M&Aを考えている中小企業経営者は3割超にも及ぶという。

驚くべき事に、倒産は減ったが、黒字状態での休廃業・解散件数は2016年に29,583件と増加傾向にあるのだと言う。

これは経営者の高齢化による後継者不在が主要因。

今では経営者の年齢の最頻値が66-67歳にまで上がってしまっているという事で、経営者の深刻な高齢化は今後進まざるを得ない様相を呈している。

 

金融機関への個人保証の問題

高齢経営者としては、もう事業経営にほとほと疲れ切っているから、早く跡目を継ぎたいわけだが、なかなかそうできない要素がいっぱいある。

もちろん、後継者候補の絶対数が足りないというのが一番の要因なのだが、仮に後継者候補がいたとしてもその候補が二の足を踏んでしまう一番大きな要因がこの「債務保証」。

経営者というのは、自分の事業に係る借金につき、基本的には個人保証を入れる事になっています。

これは事業が頓挫した時に銀行としてはカネを取りはぐれると困るため、個人からもきっちり回収できるようにするためです。

企業経営に緊張感を与えるという効果もあります。

これは心理的な高いハードルかと思います。

もちろん事業を承継する時に、その事業をこかそうと考えて引き受ける人間はいないわけですが、それは経済状況などの外部要因も絡む話。

いざ事業で資金繰りが滞留してしまったら、家屋敷、あらゆる財産を返済のために召し上げられてしまうわけです。

最低限度の生活保障する以外のカネは銀行に持っていかれます。

こんなタフな債務保証を簡単には決められないですよね。

 

自社株買取資金

また債務保証だけではなく、自社株買いの資金も必要です。

その会社のバリュエーションにもよりますが、黒字ですからそこそこの値がつく場合はあります。

下手すりゃ数千万円単位のカネが必要になる事もある。

オーナーになりたいと言って、そんなカネすぐ用意できるでしょうか。私は無理ですね。

しかも例えば、これを無償で譲渡されるとします。旧オーナーの厚情により。

しかしそれでも負担ゼロというわけにはいかない。無償で価値のあるものを譲渡されたという事で、その価値分の贈与税を課せられてしまうのです。

株式は現金ではないにも関わらず、税金を払え、というなかなか酷な税制度。

私はこの贈与税がかなり今の日本のデフレに禍根を残していると思っているのですが、事業承継においてもかなり邪魔な存在なのです。

カネがなけりゃ門前払いされる事業承継。どうしてなり手が現れましょうか。

 

旧経営者の院政および旧政権時代からの番頭がこうるさい

上記したような万難を排し、見事経営権を手に入れたとします。

しかし本当の闘いはこれから。

既存の顧客を受け継ぐとは言っても、それは前の経営者時代のお客さんです。

これらに挨拶回りにでも行くと想像しましょう。。。これは地獄です。

高齢の経営者同士でまず間違いなく、先代経営者だから良かったという話になるでしょう。

曰く、人と人の商売なんだと。若造がでしゃばるなと。

まあ事業譲渡しておいて、でしゃばるなとは暴論もいいところなのでしょうが、高齢者ってそういうもんです。

自分が創業した会社はかわいいですから、カネを積まれたとは言っても、手塩にかけた我が子をどこに馬の骨とも知れん人間に、本当は譲渡などしたくはなかったわけですね。

ですから、口先介入が物凄い事になると思います。

どこそのの会社のだれそれさんは俺が行かなきゃダメなんだとか、若造に跡目を継いだはいいが頼りがねえから、俺が面倒見なきゃダメなんだとか、取引先に吹聴して回る。

会長とか、顧問とか書かれた名刺を自分で用意して、引退後も取引先を回るかもしれません。

そんな老人が邪魔だからと言って邪慳にでもしたらこれがまた最悪。

ある事ない事、取引先に吹聴して回って、事業妨害する事だって考えられる。

高齢経営者というのはそんな矛盾に満ち満ちた存在なのです。

そして、もっと辛いのが「番頭」の存在です。

番頭とは何かというと、先代の経営者時代のナンバー2の事ですね。

大企業で言うならば、総務と経理と営業に口を出さなきゃいられない旧経営者にとっては糟糠の友だったりします。

これが最悪。

当面の仕事はこの番頭を通さなければ回らないでしょう。

しかし、少し仕事に慣れてきて、軌道に乗ってくると、この何かとこうるさい旧先代時代の遺物が邪魔で仕方なくなる瞬間が絶対やってきます。

しかし旧オーナーの目が光っているからみだりに辞めさせることもできない。

つまり形式的にカネで、オーナーシップを手に入れたとしても、実質的に老人に経営権は握られたままというケースは殊の外多いと思われるという事です。

折角リスクを取って、カネまで出して経営者になったのに、まるでサラリーマンのような待遇では誰でもやりたがらないのは当然ではないでしょうか。

 

まとめ

つらつらと書いてきましたが、そんな事情があるので、今後、事業承継はなかなか解決しないでしょう。

落としどころとしては、地域密着で少しでも求心力のある中小企業は、都心部の大資本に組み込んでもらうしかないのではないでしょうか。

当分はそんな再編が進むと思います。

そして、大資本に吸収してもらえなかった企業は休廃業を余儀なくされると。

苦しくやるせないですが、それが現実かと思います。

私も経営には興味があるのですが、上のように悲観的な事を考えてしまうので、既存の中小企業を買って経営しようという気にはさらさらなりません。

それよりも若くてITリテラシーの高い人間とワイワイやりながら、一から市場や顧客を創造していく方が楽しいと若い人間が思うのは至極当然の論理の帰結かと思います。

どっちもハードだとは思いますが、ハードならば、楽しめるかどうかはかなり大きなウェイトを占めるでしょうから。

今般の中小企業クライシスに現政権がどんな手を打ってくるのか見物だと思います。

何もしなければじり貧で日本は相当やばい事になると思いますが。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です