【労働生産性】ボトムアップでの生産性向上は無理ゲー

日本生産性本部発表の「労働生産性の国際比較2016年版」によると、2015年の日本の労働生産性はOECD(経済協力開発機構)加盟35カ国中22位。

G7(先進7カ国)では最下位という結果に。

G7で最も労働生産性の高い米国と比較すると、

・日本の製造業の労働生産性は69.7%、サービス業は49.9%という低水準なのだと言う。

この調査では、

「小売や飲食、製造業などを中心に日本企業は、1990年代からのデフレに対応して業務効率化をすすめ、利益を削ってでも低価格化を実現することで競争力強化につなげてきたところがある」

「業務の効率化を進めるだけでなく、新しいサービスや製品を生み出して付加価値を獲得することが重要ということだろう」

とまとめている。

労働生産性=売上総利益÷従業員数

売上総利益とは、売上高-売上原価の事だから、つまり労働生産性を上げようとするならば、

・売上高を増大させ、

・売上原価を極小化させ、

・それらの高いアウトプットをより少数精鋭で実現すればいい

という事になる。

 

しかし言うは易しで、それは非現実的である。

技術進歩が人口に比例するという内生的成長モデル(人口の多いほうがイノベーションを生みやすいと仮定したモデル)のような考え方を導入するまでもなく、需要の減少、つまりデフレが日本経済を蝕む最も大きな問題だからである。

1970年代以降の労働生産性の変化率を「労働者構成変化要因」と「産業内生産性向上要因」の2つに分ける事ができる。

その観点から、労働生産性の変化率を勘案すると、「労働者構成変化要因」が1990年代にプラス幅を大きく縮小させ、2000年以降はマイナス寄与となったという事だ。

「労働者構成変化要因」とは、労働者が産業間を移動することで労働生産性が変化する要因である。

つまり1990年代以降、日本の労働者は生産性の高い産業から、低い産業へ移動してしまったという事を意味している。

労働生産性の高い産業により多くの労働者が移動すれば日本全体の労働生産性が上がるが、2000年以降はむしろ労働生産性の低い産業に労働者が移動してしまっていて、日本全体の労働生産性の伸び率を抑制させているというのだ。

普通、労働生産性の高い産業や企業はキャッシュリッチであるため、雇用を増やすことが期待される、つまり、労働生産性の高い方へ人が流れる事が推察されるが、実際にはそのようになっていない。

そのようになっていないからこそ、労働生産性の高さを保持しているとも言えるのだが。

つまり少数精鋭で高い売上総利益率を保持すれば労働生産性は上がるのだが、この労働生産性の高さは従事する労働者の少なさも寄与しているため、多くの人手を必要とする産業に労働者は流れざるを得ず、結局労働生産性の低い産業は低いまま。

それが固定化されてきてしまったという事なのである。

 

2002年~2017年の業種別の就業者数によると、最も就業者数が増加した業種は「医療、福祉」のプラス74.0%だそうだ。

高齢化社会における需要増が明らかである。

一方、最も減少した業種は「農業、林業」のマイナス24.1%との事。

こちらの要因も同様に、高齢化による後継者問題などが影響を与えている。

だから、いずれの業種の変化も、別段、生産性の高い産業に労働者が移動したとか、生産性が低いで革命などが起き、生産性の低い産業が淘汰されたというわけではない。

小売や飲食などでは人手不足で悲鳴を上げているにも関わらず、それが賃金上昇に繋がっていない事や、需要過多になっているのに値上げに踏み切れない産業別のリーディングカンパニーの無為無策ぶりが露呈している。

この事から、今後は自動化や機械化により各産業における雇用が奪われるといった議論が活発だが、実際には高齢化をはじめとした社会構造の変化におけるその時代時代での「必要性」の変遷に産業構造は足並みを合わせる事が容易に想像できる。

だから超高齢社会日本の場合、生産性を引き上げることが困難な「医療・介護」などのサービス産業の需要が今後も増加していき、当産業での人手不足がますます深刻化するだろう。

売上総利益÷従業員数=労働生産性。

この段に至ると、もはや労働者側からのボトムアップで労働生産性を改善させる事などほぼほぼ無理ゲーという事がわかる。

それゆえマクロ的には、政府としては金融政策、財政政策でもって、低生産性産業の労働者の給料が上がるように働きかけていくより他に仕方がなかろうというのが冷静かつ現実的な解決策であろう。

つまりやはりインフレ目標を達成するまでは量的緩和は続行しなくてはいけないし、今のデフレ状況下で消費税の増税などは絶対してはいけないという事だ。

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