【オススメ漫画】「バンビ~ノ!」&「バンビ~ノ!SECOND」

スピリッツで以前連載されていたイタリアン漫画の名作。

連載当時も、スピリッツで読んでいたが、最近改めて読み直し、名作と再確認した。

とりわけ「バンビ~ノ!」の「ドルチェ編」が最高に良かった。

 

【ここから先、多少のネタバレあり】

 

バンビ(主人公)が、バッカナーレのpasticciere(パスティッチエーレ)である織田とドルチェ作りに勤しむ。

気難しい職人気質で、少し自閉症気味に描かれる織田は、しかしそれでもその反社会性ゆえか、お菓子作りには並々ならぬ才能をバッカナーレにおいて発揮している。

そんな腕はいいが、難物の織田に拒否されながらも、持前の行動力とひたむきさで、何度もぶつかっていくバンビを見ていると、とても勇気を貰えるし、働く事の本質みたいなモノを感じられて大変良い。

コミュ障の織田さんも、そんなバンビにいつしか心を開き始め、バンビを弟子として認めていく描写にはかなりグッとくる。

どんなに相性の悪い人間でも、何かひとつリスペクトできる点さえ見つけ出して、心からぶっつかって行けば、活路が開ける。

そんな織田さんとバンビの師弟愛が、「バンビ~ノ!」における一番の見せ場だと感じた。

 

「SECONDO」のジュリア・ボッカルド編

「バンビ~ノ!」と比較すると、「SECONDO」は少し評価が良くないようである。

確かに、バンビの料理人としての成功を描いていた「バンビ~ノ!」は自分の仕事の辛かった時の記憶などと相まって、感情移入がしやすく、泣いたり、怒ったり、笑ったりしやすかった。

しかし物語の進行とともに、段々バンビが成長してくると、成長がある程度飽和してくる。

バッカナーレの同僚たちとの人間関係も安定的になってくると、安心して読める起伏のない漫画になってしまう。

そこで、主要キャラを殺してみたり、土屋という悪役らしい悪役を作ってみたり(この土屋が大分不評)、現実離れしたシチュエーションで料理勝負を連発させたりと、設定が少し浮世離れしてきた感は多少感じた。

それでも、私は「SECONDO」を名作だと感じた。

 

 

特に感動したのが、「ジュリア・ボッカルド編」

イタリアのシチリア島トラーパニ出身のハリウッドの世界的スター女優、ジュリア・ボッカルドが新作映画のPRか何かで来日。

「何か美味しいモノが食べたい」というジュリアのリクエストを投げられた料理評論家の永坂が、バンビが働く横浜レガーレ(六本木バッカナーレの二号店)を推薦。

その推薦により、ジュリアがお忍びでレガーレに食事に来る。

 

最初は、

「日本人の作ったイタリアンなんて偽物」

と文句タラタラのジュリアだったが、レガーレの精鋭たちの作った料理があまり美味しく、また、シチリア料理を本国の料理人以上に皿の上に実現している事を舌と本心では認めざるを得ない状態に追い込まれていく。

料理の出来があまりに良いので、シチリアの少女時代を思い出させられるジュリア。

 

15歳で、最愛の母を病気で失ったジュリアは、スターになるために伝手を頼って渡米。

亡き最愛の母親や故郷シチリアの思い出を気丈にも捨てて生きてきた彼女だったが、レガーレの料理で問答無用に辛かった少女時代を追憶する事となる。

思い出される記憶を必死で払拭するようにレガーレの料理に強い口調でダメ出しするジュリア。

そんなジュリアの気丈や強がりを、側近のマネージャーもレガーレのスタッフも優しく見て見ぬフリをする演出がまたいい。

 

そしてSECONDO PIATTO、つまりメインディッシュでサーブされた皿が、「子羊のストゥファート」だった。

ストゥファートとは、イタリア語で、ストーブ料理の事。

おばあさんが、ストーブに肉料理をかけて、うたたねするほど、コトコト煮込んでしまったら、偶然生まれたと言われるシチリアの代表的郷土料理。

シチリアの家庭料理だったこの「ストゥファート」はジュリア最愛の母の得意料理でもあった。

この「ストゥファート」を口にするなり、感情がほとばしり、激昂するジュリア。

 

「こんな料理ニセモノよ」

「やっぱり日本人の作ったイタリアンね」

「本物のストゥファート食べたことあるの?」

「本物はもっとおいしいわ!!」

「本物は…」

「マンマのストゥファートは…」

「もっと…」

 

そこまで言って、気丈に張りつめた糸が切れたかのように嗚咽するジュリア。

私は当時も今も、ここの描写を読んで、大号泣させられました。

どんなに母の思い出やシチリアを捨てたつもりでいても、どうしても捨てきれなかった、母が愛してくれた記憶、苦楽を共にした記憶、そして母の手料理。

その最愛の母親の手料理を事もあろうに、遠いアジアの日本で思い出させられる一種のナショナリティの屈従。

そしてどんなに我慢しても、本能的、生理的な舌と記憶には抗えないその様々な感情が混然一体となった嗚咽に、この漫画が名作たる所以を見たのです。

文章は基本的には漫画に勝てませんから、ぜひ、読んでみる事をオススメしたい漫画。

人生において、大事なモノがいっぱい詰まっている漫画です。

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